航空機部隊において、平時と有事の環境の違いという点で航空戦力の持続力についての改善策を示してほしい。なお、以下の２部門の視点からそれぞれ述べること。

１　一部隊

２　幕僚監部

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１　一部隊（航空隊・航空群などの現場単位）

（１）平時の環境

訓練と警戒監視任務が中心。出撃回数は制御されており、整備計画も余裕をもって調整可能。

部品補給・修理・人員交代も定常サイクルで行える。

外部支援（補給処・基地隊など）も計画的に利用できる。

（２）有事の環境

出撃頻度が急増、連続運用で整備間隔が短縮。

整備員の疲労や交代要員不足が顕在化。

部品需給が逼迫し、前線基地における補給困難が想定される。

敵の攻撃・サイバー妨害により、整備・指揮通信環境が混乱。

（３）改善策（部隊レベル）

即応整備体制の強化

平時から「有事即応整備サイクル」のシミュレーションを実施。

夜間・連続出撃を想定した交代勤務制度を確立。

分散運用の訓練

一定の整備能力・補給品を前方小規模基地に事前配置。

分散展開（デカップリング）した状態での連続運用演練。

人的持続力の確保

整備員・補給員の多技能化（オールラウンダー化）を促進。

交代要員プール（予備自衛官等）の実戦的活用訓練。

部品・消耗品の即応備蓄

高消耗部品（タイヤ、オイル、フィルター等）を部隊内で平時から一定量備蓄。

専用輸送ルートを想定した搬送計画を策定。

２　幕僚監部（制度設計・戦略単位）

（１）平時の環境

予算・人員は制約が大きく、有事を想定した冗長性は削減されやすい。

補給・整備体系は「平時効率性」が重視されがち。

外交・同盟関係を背景に、後方支援は想定上安定している。

（２）有事の環境

出撃頻度が急増し、従来の補給・修理体系が追随不能。

基地・補給拠点が攻撃対象となる。

米軍や他国との連携が必須。

長期化すれば「産業界を含む国家総力体制」が不可欠。

（３）改善策（幕僚監部レベル）

補給網の多層化

国内外の複数ルートでの部品・燃料補給体制を確立。

有事に備え、民間空港・工場を「補給・整備拠点」として活用する法的枠組み。

整備基盤の分散化・強靭化

主要航空基地が攻撃を受けても継続運用可能な「分散整備拠点ネットワーク」を設計。

移動整備ユニット（コンテナ式工場）の導入検討。

人員持続力の制度設計

整備員・操縦士の連続運用を見越した「戦時勤務ローテーション基準」を策定。

予備自衛官制度の拡充（特に航空整備・電子戦分野）。

同盟・産業界との連携強化

米軍や国内防衛産業と「戦時共同補給・修理契約」を平時から整備。

部品国産化・代替生産ラインを強化し、有事に備えた産業動員体制を準備。

サイバー・情報基盤の保全

有事における指揮・補給システムへのサイバー攻撃を想定し、冗長化した指揮通信網を構築。

平時からサイバー演習を実施し、継続的な補給・情報維持能力を確保。

まとめ

一部隊レベルでは「現場運用の柔軟性（整備サイクル・分散展開・人的交代・部品即応備蓄）」が持続力向上の鍵。

幕僚監部レベルでは「制度的冗長性（補給網・整備基盤・人員制度・同盟連携・産業動員・情報保全）」が不可欠。

したがって、両者の改善策は 「現場で即応できる持続力」と「国家・同盟全体で支える持続力」 の二層構造で補完しあうことが最適解となります。